近年、インドの税務調査(Tax Assessment)は、E-Assessmentと呼ばれるオンライン税務調査へ移行しています。納税者への税務調査の通知、必要情報の提出・回答などの初期対応は、一部の例外を除き、すべて電子化されています。そのためインド税務当局が提供するポータルサイト(所得税ポータルやGSTポータル)で納税者自身のアカウントにログインした上で、税務通知確認や回答提出を行うことになります。
税務調査の通知を受領した場合
税務調査の通知と一口に言っても、税金の種類(所得税、GST、関税等)や税務調査の段階(税務当局による監査のための情報提供の段階、情報開示を求める通知(Show Cause Notice - SCN)の段階、更正処分の段階等)で様々であり、それぞれ税務通知には個別の名称があります。
そのため、税務調査の通知を受領した場合は、その通知の名称及び内容を確認し、「指摘事項の内容は何か?」「提出が要請されている情報や会計データはあるか?」「いつまでに回答が求められているのか?」「進行している税務調査はどの段階にあるのか?」等を確認する必要があります。納税者と税務担当官(Assessing Officer - AO)の解釈等が一致せず、税務調査段階で課税性の議論が決着しない場合には、納税者は訴訟の場に解決を委ねることになります。インド所得税法やGST法は税務年度ごとに、税務当局が更正処分通知を発行できる期日を規定しており、税務調査段階で課税性の議論が決着していないと納税者が考えている場合であっても、更正処分通知が発行されてしまうケースはよく見られます。
よってたとえ税務調査の初期段階の回答であっても、訴訟手続きに進むことも想定した上で回答を作成します。税務調査及びその後の訴訟手続きを通して一貫性のある回答や主張を行うためにも、回答や主張のロジックを税務調査の初期段階から戦略的に構築していくことが望まれます。また、税務担当官が更正処分通知を発行できる期日から逆算し税務担当官の意図を汲みながら、彼らと議論を展開していくことが有効になるでしょう。
税務調査の通知の回答期日が過ぎてしまっている場合
通常、税務調査の通知が税務担当官から届く際に、回答期限が記載されています。様々な理由(通知に気づかなかった、通知が来た時点で回答期限が既に過ぎている等)から当該期限までに回答が間に合わない場合があります。その際には、慌てず税務担当官に適切な理由と共に回答期限の延長を申し出ることにより、回答期限を延長してもらうことが可能な場合があります。税務調査のどの段階の税務通知であるのかにもよりますが、税務当局の重ねての通知に返答していないなどの心証を害するような要因がない限り、税務調査の初期段階での回答期限の延長は認められる傾向にあります。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |