インドで事業を行う際に、まず確認をしなければならないのが、インド商工省傘下の産業政策推進局(Department of Industrial Policy and Promotion-DIPP)が定期的に発表する外国直接投資規制(統合FDIポリシー)です。多くの分野で現在緩和が既に行われましたが、現地法人を設立する前に、外国企業がいずれの出資比率まで投資が認められているのか?投資に際して事前の政府認可の有無を確認する必要があります。外国直接投資は、インド経済を推進する主要な要因の一つとしていずれの政権も重要な政策の一つとして毎年見直しと緩和が行われています。
外国直接投資は、自動承認(Automatic)と政府認可(Government Approval)ルートの2つに分類されます。投資を行う産業分野別にいずれの出資比率まで自動承認なのか、いずれの出資比率を超えると政府認可が必要になるかが定められている。政府認可が必要な業種については外国投資促進委員会(Foreign Investment Promotion Board)の認可を取得後投資可能です。産業の分類については、大きく分けて6分の産業分野(農業、鉱業・石油&ガス、製造業、サービス業、金融業、その他)、さらに細分化された業種ごとに定められています。
禁止業種
- 宝くじ
- 賭博、カジノの運営
- チットファンド
- 二ディカンパニー
- 譲渡可能開発権(Transferable Development Rights-TDR)の取引
- 不動産業及びファームハウスの建設
- 葉巻・たばこ製品の製造
- 民間に許可されていない活動・産業(原子力・許可された以外の鉄道関連事業)
外資規制存在の背景
インド政府は独立後、旧ソビエト連邦の5ヶ年計画を参考にしながら計画経済を導入。政府は保護貿易、輸入代替化、企業の公営化の経済政策を推進し、計画委員会が策定した5ヶ年計画に基づき、自由市場の需要の需要ではなく政府主導の生産計画を元にあらゆる製品供給する体制を構築していきました。その時代は、政府は計画に基づき生産を行うことができる民間企業に製造ライセンスを供与する形で数社に限定していたことからライセンスラジ(ライセンス統治)と呼ばれていたのです。
その後市場経済に基づいた自由競争が行われなかったことから、構造的な欠陥が長期的に積み上げられていく結果となっていた。ついに、その問題は1991年の湾岸戦争を契機とした対外債務危機として顕在化しました。当時発足した国民会議派政権のラオ政権は、既存の経済政策からの転換を余儀なくされ、自由化政策を推進することとなったのです。今日も残っているインドの外国直接投資規制は、この計画経済から自由化の流れの政策転換の変遷の結果と言えるでしょう。
直近の改正点
- 単一ブランド小売り
従来、単一ブランド小売事業へ投資する際には、国内調達要件が課せられており、30%の調達が義務付けられていました。今般の改正により3 年間の猶予期間が設けられることとなり、最先端技術を利用した製品に関する単一ブランド小売事業についてはさらに追加5 年の猶予が認められました。 - 食料品取引
政府認可ルートでの100%までの外国直接投資が、インド国内生産または製造された食料品の取引(電子商取引を含む)について認められました。 - 防衛
従来49%までが自動承認ルートで認められていました防衛産業が、それ以上の投資について現代技術及び最先端技術の供与がある場合、個別の案件ごとに政府認可が認可必要とされていました。改正によって以下の2 点が緩和されています。
a) 最先端技術(‘state-of-art’)の条件が免除、政府認可に必要な要件は現代技術またはその他の理由の記載のみとなった。
b) 防衛産業にかかるFDIポリシーは、1959 年武器法(Arms Act 1959)に基づき製造される小火器及び弾薬についても適用されることとなった。 - 製薬
従来、新規投資については100%まで自動承認、既存案件は政府認可ルートで100%まで認められていました。改正にて既存案件への投資についても74%まで自動承認とし、それを超える投資についてのみ政府認可ルートへと要件を緩和しました。 - 民間航空
従来、空港分野に関する外国直接投資は、新規プロジェクトは自動承認で100%、既存プロジェクトは自動承認ルートで74%まで認められています。既存プロジェクトに関して74%を超える外国直接投資は、政府認可ルートでした。混雑回避のための空港近代化が喫緊の課題という点から、既存プロジェクトに関しても100%の外国直接投資が自動承認となりました。 - 民間警備
従来、政府認可ルートで49%まで許可されていましたが、改正により49%まで自動承認、49%超74%までを政府認可ルートで認めました。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |