現地企業のM&A、事業内容の変更、合弁の解消、よりインド市場へ適合した社名への変更など、いくつかの場面で事業上会社名(商号)を変更する手続きが必要となる場面があります。商標としての登録の有無など細かい状況により手続き内容は異なりますが、ここでは一般的な会社名変更の手続きについて解説します。
1. 新商号の取得
会社設立時に商号を申請するのと同様に、会社名変更の際にも商号申請を行います。管轄当局は会社登記局(Registrar of Company - ROC)となっており、Form INC-1にて申請を行う。申請書中には、最大6つの新商号の候補を記載することが可能で、優先順位が高い順に記入します。また、確認項目として類似の登録商標の存在、既存のインド会社又は外国親会社と類似していないか、金融関連(Bank, Insurance, Stock exchange, Asset Managmentなど)の単語が含まれる場合は監督官庁からの承認の有無などの確認項目が存在します。申請に際して必要となる書類は以下の通りです。
- 会社名変更を申請する会社の取締役会決議書
- 監督規制官庁からの承認(必要な場合のみ)
- 会社名変更を申請する会社からの異議なし証明書(Non Objection Certificate - NOC)
- 外国親会社からの決議書(Resolution)
2. 定款の変更
会社登記局において商号申請が受理された後、その内容を会社定款(MOA & AOA)へ反映させる作業を行います。会社定款の変更に際しては株主総会による特別決議(4分の3以上)が必要となるため、取締役会を開催し株主総会を招集し株主の決議を行います。直近で年次株主総会の開催予定がない場合には臨時株主総会として開催する。尚、定款の変更はその決議より30日以内に会社登記局へMGT-14と呼ばれる様式で通知を行わなければなりません。通知に際して必要となる書類は以下の通りです。
- 株主総会の特別決議決議書
- 改訂版の定款(MOA & AOA)
3. 中央政府への商号変更申請
最後に中央政府に対しても同様に、商号変更の内容をForm INC-24にて届け出を行います。左記様式には、上述の1及び2の手続き概要も記入する必要がありコンプライアンスに漏れがないかのチェック機能も有しています。Form INC-24提出に際して必要となる書類は、株主総会の議事録となっています。
4. 各種税務登録の変更
会社名変更の手続き完了後、旧会社名で認知している顧客への周知、税務登録内容の変更、契約名義の変更など必要な手続きを行います。税務登録に関しては、各社毎にその状況は異なるが最低限PAN及びTANの登録は行っているはずなので、所得税局へ会社名変更の手続きを行う必要があります。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |