インドのIT産業は、設計やプログラミング、システム運用などをアウトソースするITO(Information Technology Outsourcing)、カスタマーサポートや会計処理などのバックオフィス業務をアウトソースするBPO(Business Process Outsourcing)などを米国を中心に受託し発達してきました。その背景にあるのは、英語人材、米国との時差、ITスキルを身につけた労働力が豊富、低価格な労働力などの要因です。
欧米企業は積極的にインド拠点での人材登用を拡大し、世界で約35万人の従業員を抱えるアクセンチュアはうち約10万人をインドで雇用しています。またインド系コンサルティングファームでもタタ・コンサルタンシーは世界最大のコンサルティングファームとして約30万人の従業員を抱え、インフォシスやウィプロも大手として有名です。
しかしながら低価格と言われていた労働力については、勢いのある経済成長とインフレにけん引される年率10%程度の賃金上昇によりその実質的な効果は低くなりつつあります。また、カスタマーサービスなどの機能も一時はインドへ移転する動きもありましたが、なまりの強いインド英語やホスピタリティの観点などからフィリピンなどへ移転する企業も少なくはありません。
日本企業に関しては、ITOの拠点としてインドを活用はしていますが、日本の主要な言語が日本語であり英語が使われていない背景から、日本語人材を活用したBPOというのはほぼ行われていない。日本語のBPOについてはむしろ中国が主要な拠点として活用されています。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |