インド所得税法では、源泉徴収される2種類の源泉徴収税が規定されています。一つは、TDS(Tax Collected at Source)、もう一つはTCS(Tax Collected at Source)になります。ここでは、2つの税の違いと2020年10月1日より改正が施行されるTCSの規定について紹介します。
TDSとTCSの違いとは?
TDSとTCSの制度上の違いは、大まかに2点あります。一つは対象となる取引が異なること。もう1点はTDSは支払代金の一部を文字通り控除(Deduct)してサービス受益者が納付しますが、TCSは販売者が支払代金に追加して請求・徴収(Collect)し納付する点です。
TDS(Tax Deducted at Source) | TCS(Tax Collected at Source) | |
概要 | 一定金額を超える利息、契約業務、技術サービスに対する対価、給与、家賃等の支払時に企業・個人側で源泉徴収が義務付けられている。 ※主に、無形の役務・便益提供に対して |
一定金額を超える特定の物品取引に対して、物品の販売者が購入者から商品代金と別途徴収し納税する義務がある。 |
徴収義務 | 支払者(受益者) | 販売者 |
負担者 | サービス提供者 | 物品購入者 |
徴収方法 | 支払者が、支払い時に一部金額を控除し納付 例:TDS10%の場合 役務対価 100 TDS控除額 △10 純支払額 90 |
販売者が、購入者へ請求時に当該金額を追加徴収し納付 例:TCS1%の場合 商品代金 100 TCS徴収額 1 純支払額 101 |
2020年10月1日改正のTCS規定の内容とは?
TCSの詳細は、インド所得税法第206C条にて規定されています。今般の改正で(1H)項が追加され、従来日本企業とはあまり関係ない物品取引のみが対象でしたが一般的な販売取引内容にも課税対象が拡大され対象となる販売企業は追加のコンプライアンスが求められます。
従来の規定と今般追加になった内容は以下の通りです。
条文番号 | 品目 | TCS税率 |
206C条(1) | アルコール飲料、スクラップ、鉱物資源、鉄鉱石、20万ルピー超の金塊、50万ルピー超の宝石 | 1% |
その他木材等 | 2.5%~5% | |
206C条(1C) | 事業目的での採掘権、駐車場、料金所等の使用権、ライセンス料 | 2% |
206C条(1F) | 100万ルピー超の車両販売や政府が通達で通知するその他物品販売 | 1% |
206C条(1G) | インド準備銀行のLRSスキームに基づいた、年間70万ルピーを超える外国送金 | 20% |
206C条(1H) ※2020年10月1日施行 |
上記品目を除く、物品販売において購入者(Buyer)から受領する年間総額500万ルピーを超える金額に対して | 0.1% |
2020年10月1日改正のTCS規定の対象となる企業は?
新たに導入されるインド所得税法第206C条(1H)の対象となるかを確認するには、前年度売上高(1億ルピー超)及び当年度の当該取引金額を確認する必要があります。
前年度事業収入(販売、売掛金回収、売上高)が1億ルピー超の販売者である | 当該年度に第206C条(1H)対象となる物品販売が1購入者(Buyer)あたり年間総額500万ルピー超ある | 新たなTCS規定の対象となるか? |
× | × | 対象外 |
× | 〇 | 対象外 |
〇 | × | 対象外 |
〇 | 〇 | 対象 |
TCSのコンプライアンスとは?
新たな206C条(1H)の対象となる企業は、以下のコンプライアンスを行う必要があります。
- 該当する購入者(Buyer)への2020年10月1日以降の請求書に、TCS(を付加して徴収する
- 毎月徴収したTCSを翌月7日までに納付(TDSと同様)
- 四半期毎にTCS申告書(Form 27EQ)を作成・提出
- 四半期毎に源泉徴収証明書を購入者宛に発行
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |