会社を設立するまでにかかった費用は日本の会計基準では「創立費」と呼びますが、インドでは「Preliminary expense」と呼びます。インドに現地法人を設立する際には日本親会社がインド市場調査費用や法人設立費用を立て替えて支払うことが一般的ですが、インド法人(子会社もしくは合弁会社)設立に際し発生した費用のうち、何がインド側で計上可能なのか?そして、どのように計上されるのかを以下の通りまとめました。費用計上可能かどうかについては個別の確認・判断が必要となります。
何がインド会社設立費用として計上できるのか?
<会計上の取り扱い>
所得税法のように具体的な記述は少ないですが、インド会計基準の第26号にて以下の通り述べられています。
- 弁護士、会社秘書役、会計事務所などの専門家費用
- 新規施設・事業開業のための費用
- 新規活動・製品・プロセスの立ち上げ費用
<税法上の取り扱い>
1961年インド所得税法第35D条に以下の支出に関連する項目が定められています。尚、費用については自身が支出したものと、コンサルタント、会計事務所や代理人などを通じて間接的に支出したものも含みます。
- フィージビリティーレポート(Feasibility report)の作成
- プロジェクトリポート(Project report)の作成
- 市場調査(Market research)及びその他の調査の実施
- 事業に関連したエンジニアリングサービス
- 拠点設立・ビジネス開始に際して必要な契約書作成のための弁護士費用
- 定款作成のための弁護士費用
- 定款の印刷費用
- 会社登記にかかる法定費用(印紙税や会社登記局の事務手数料など)
- 株式・社債を公募する場合の、証券会社の手数料、目論見書の作成・広告費用
会社設立費用の計上方法とは?
<会計上の取り扱い>
原則として発生時に費用計上されます。
<税法上の取り扱い>
5年に渡って均等に償却されます。
海外送金が可能な上限額
本社がPreliminary expenseを立て替えて支払っている場合、法人設立後にインド現地法人から本社に海外送金することになります。この送金は経費精算目的ですので、本社からインド現地法人宛にDebit Note(経費精算請求書)を発行してもらった上で、送金依頼書等をインドの銀行に提出し海外送金することになります。
ただインド準備銀行はMaster Direction - Other Remittance Facilities(FED Master Direction No. 8/2015-16)を発行しておりこのMaster Directionの4.4ではインドへの投資額の5%またはUSD 100,000のいずれか高い金額を超える設立前費用の海外送金にはインドの準備銀行の事前許可の取得必要である旨を規定しています。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |