従来、インドでは外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act - FEMA)の規制が強く、製造業以外の企業に関しては資金調達オプションが限定的でした。しかしながら、2019年1月16日付けのインド準備銀行(Reserve Bank of India - RBI)が発した通達により大幅に活用範囲が広がり、外国投資規制を受けていない全ての企業が対象となりました。さらにその後、2026年2月9日付けのRBIの通達で、上限金利の撤廃や資金使途が拡大し、より使い勝手のよい制度に改正されています。
概要
ECB(External Commercial Borrowing)とは、適格借主であるインド居住者がインド非居住者である認定貸主から借り受ける商業ローンの総称です。当ローンは規制の対象であり最低平均償還期間、資金使途、上限借入金額等の要件を遵守しなければならなりません。現在は、外貨建てとルピー建ての2種のECBに大別されます。以下の要件を満たすことが可能な場合、自動承認となりすぐに借入手続きに入ることが可能です。一方で以下の要件から一部はずれた条件でも借入は可能ですが、その場合にはインド準備銀行の事前承認が必要となります。
| 外貨建てECB | インドルピー建てECB | |
| 借入可能通貨 | インドルピー以外の外国為替(米ドル、日本円、ユーロ等) | インドルピー |
| 適格借主 |
(1)インド中央政府または州政府の法令によって、設立、開設、登録されたインド居住者(個人を除く) (2)再建計画または企業倒産処理手続きの対象となっているの適格借主は、特別許可が必要である (3)FEMAに関する調査、裁定または不服申立てが係属中の適格借主は、当該調査、裁定または上訴の結果を害することなく、ECBを調達できるが、関連する情報をForm ECB-1に基づき開示する必要がある |
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| 認定貸主 |
(a)インド国外の居住者 (b)貸付業務がRBIによって規制される事業体のインド国外支店 (c)国際金融サービスセンター(International Financial Services Centre - IFSC)内に設立された金融機関または金融機関の支店 |
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| 最低平均償還期間 |
原則、最低平均償還期間(Minimum Average Maturity Period - MAMP)は3年 ただし、製造業は年間上限額USD1億5000万としてMAMP1~3年のECBを組むことが可能 |
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| 金利 | 金利等は市場金利ベースでの決定。上限金利はなし。 | |
| 上限借入金額 | 以下のいずれか高い方の金額まで (a)ECB借入額のみでUSD10億 (b)国内+ECB借入の合計額が直近監査済み財務諸表における純資産の300% |
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| 資金使途 |
禁止されている資金使途(ネガティブリスト)を以下の通り列挙する。
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親子ローン・対外商業借入実行までの流れ
上記条件に合致する内容で借入を行うという仮定のもとでの、一般的な借入実行までの流れは以下の通りです。
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借入条件の整理
まずは、借入期間、金額、利率等の借入条件の整理を行う。利率は、移転価格の観点からも他拠点で同様の親子ローンを組んでいる場合には、その利率と同等の利率を設定したり、もしくは事前に移転価格のベンチマーキングを行い適正な利率を把握しておくことが重要である。
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借入契約書(Loan agreement)の作成・締結
借入条件の整理が完了したら、その内容を契約書に落とし込む。特に最低平均償還期間などは既定の年数を上回っていないと、インド準備銀行から借入登録番号が取得できないため、提出先となる公認取引銀行(Authorized Dealer Bank - AD Bank)と相談・確認をしながら進めるとよい。契約書作成後は、当事者同士で署名を行い契約を締結する。
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借入登録番号(Loan Registration Number)の取得
契約書作成後、Form-ECBと呼ばれる借入の申請書式を準備し、インド地場銀行又は邦銀のインド支店を通じてインド準備銀行に借入登録番号を申請する。Form-ECBは契約署名日より7日以内に提出しなければならないため、借入契約書の作成と並行して進めることを推奨する。Form-ECBは勅許会計士又は会社秘書役の証明が必要となる。Form-ECB提出後、1週間~10日程度でインド準備銀行より借入登録番号が付与される。尚、申請者の情報(企業名、借入金額、借入期間)はインド準備銀行ホームページにて公開されるので留意する必要がある。
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借入の実行
借入登録番号取得後、借入資金の送金が可能となる。一般の銀行ルートを通じて送金を行う。
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借入後のコンプライアンス
借入実行後、毎月翌月7日までにForm ECB-2と言われる書式で、インド準備銀行に対し借入資金の返済状況、残高の報告を行わなければならない。
輸入決済代金の繰り延べについて(サプライヤーズ・クレジット)
インドへ輸入する物品にかかる海外サプライヤーに対する代金決済は、最大6ヵ月を超えない期間で繰り延べることが可能です。
また、カテゴリーⅠの公認取引銀行は、数量や品質、契約条件の不履行、財政難、輸入者が売主に対して訴訟を起こした場合などを理由とする輸入代金の決済遅延について、インボイス価格に関係なく一度に6ヶ月まで(最長3年まで)期間延長を認めることを検討可能です。
インド非居住者に対する利子支払にかかる源泉徴収税率は?
<外貨建ての借入れ>
インド非居住者からの外貨建ての借入(ECB等)に対する利子支払いの際には、20%(+健康教育目的税、+加算税)で源泉徴収税の源泉徴収が求められます(1961年インド所得税法第115A条)(2025年インド所得税法第207条)。一方で日印租税条約の適用ができる場合には、この源泉徴収税率は10%までに軽減されます。
また、外貨を積極的に獲得したい思惑のあるインド政府は、上記の利子支払いに対して一定の優遇措置を設けています。1961年インド所得税法第194LC条において、以下に該当するインド非居住者に対する利子の支払いに関しては5%の軽減税率が適用されます。本税率は日印租税条約に規定される利子支払いに対する源泉徴収税率10%よりもさらに優遇された税率です。なお、本税率が適用できる借入れの実行期限は2023年7月1日までとなっており、それ以降に実行した借入れには適用できません。
- 外貨建て借入契約(Loan Agreement)
- 外貨建て長期社債(Long-term bond)
- 外貨建て長期インフラ債(Long-term infrastructure bond)
- インドルピー建て社債(Rupee denominated bond - RDB)
<インドルピー建て借入れ>
インド非居住者からのインドルピー建ての借入(ECB等)に対する利子支払いの際には、35%(+健康教育目的税、+加算税)で源泉徴収税の源泉徴収が求められます。一方で日印租税条約の適用ができる場合には、この源泉徴収税率は10%までに軽減されます。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |


