日本の移転価格税制での独立企業間価格(Arm's Length Price - ALP)と認められる一定の数値又は利益率の幅である独立企業間価格幅では、基本的に四分位法の考え方が用いられます。四分位法とは比較対象取引の上位25%と下位25%を切り捨てた中央部分の幅をもって独立企業間価格幅とする考え方です。
インドの移転価格税制では四分位法は採用しておらず、比較対象の上位35%と下位35%を切り捨てることになっており、日本に比べ比較対象の外れ値を排除する割合が高いことが日本とインドの移転価格税制の大きな違いの1つです。
独立企業間価格(Arm's Length Price - ALP)の算定方法
インドの独立企業間価格(Arm's Length Price - ALP)は、以下のいずれかの方法の内、最も適した方法で算定する必要があります(インド所得税法第92C条1項)。算定方法はOECDのガイドラインに準拠しています。
- 独立価格批准法(Comparable Uncontrollable Price Method - CUP)
- 再販売価格基準法(Resale Price Method - RPM)
- 原価基準法(Cost Plus Method - CPM)
- 利益分割法(Profit Split Method - PSM)
- 取引単位営業利益法(Transnational Net Margin Method - TNMM)
- 直接税中央委員会(Central Board of Direct Taxes - CBDT)が規定するその他の方法(Other Method)
そして、最も適した方法が上記の「4」「6」以外であり、かつデータセット(比較対象企業)が6社以上ある場合には、データセット(比較対象企業)の上位35%と下位35%を切り捨てた中央部分の幅をもって独立企業間価格幅(Arm's Length Range)とします(インド所得税法細則第10CA条4項)。そして、実際の関連者との国際関連者取引又は特定国内取引の際に採用された取引価格が、この幅に収まっている場合には、その価格は独立企業間価格(Arm's Length Price - ALP)であったとみなされます(インド所得税法細則第10CA条5項)。一方で、実際の取引価格がこの幅に収まっていない場合にはデータセット(比較対象企業)の中央値(Median)の価格が独立企業間価格(Arm's Length Price - ALP)となります(インド所得税法細則第10CA条6項)。
また、データセット(比較対象企業)が6社未満等の場合には、データセット(比較対象企業)の算術平均値(Arithmetical Mean)の価格が独立企業間価格(Arm's Length Price - ALP)となります(インド所得税法細則第10CA条7項)。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |