最低代替税(Minimum Alternate Tax - MAT)とは、インド所得税法に基づいて算出された法人税額が会計帳簿上の利益(調整後)の15%を下回る場合に支払う必要のある一種の法人税です。MATは、所得税法上の様々な所得控除や税制優遇を活用することで、納税者が単年の納税額を著しく減額させようとする行為を防ぐことを目的としており、日本の法人税法にはないインド特有の制度です。
納税者は、所得税法で計算される法人税額と、「調整後の会計帳簿上の利益(Book Profit)」に基づいて計算されるMATの税額を比較しいずれか高い金額を納付することになります。つまり、会計帳簿上では利益が出ているものの、繰越欠損金等を考慮した場合には法人税額が算出されない又は少額である場合であっても、MATの納税が必要になる場合があります。
MATの計算方法
まずMATは「調整後の会計帳簿上の利益(Book Profit)」に基本税率15%を乗じて算出します(1961年インド所得税法第115JB条)(2025年インド所得税法第206条)。加算税(Surcharge)及び4%の健康教育目的税(Health and Education Cess)も基本税率15%に加算され実効税率が決定されます。
| 課税所得 | MAT基本税率 | MAT実効税率 |
| 1,000万ルピー以下 | 15% | 15.6% |
| 1,000万ルピー超~1億ルピー以下 | 15% | 16.69% |
| 1億ルピー超 | 15% | 17.47% |
この「調整後の会計帳簿上の利益(Book Profit)」は損益計算書の税引後当期純利益をベースに1961年インド所得税法第115JB条2項Explanation 1(2025年インド所得税法第206条2項)で定められた加算/減算調整項目を加味して計算します。なお、この加算調整項目の1つにに法人税額が含まれているため(税引後当期純利益に法人税額を足し戻すことになるため)、税引前当期純利益をベースにその他の加算/減算調整項目を加味して、MATを算出すると整理することもできます。ここでいう損益計算書とは2013年インド会社法Schedule Ⅲに基づいて作成される、法定監査対象の損益計算書を指します。
MATが適用されない又は軽減される会社
各種の所得控除等を利用しないことで任意で選択できる新法人税率22%(実効税率:25.17%)や新規製造業が適用可能な15%(実行税率:17.16%)を選択する内国会社の場合には、法人税額の計算の際に基本的に様々な所得控除や税制優遇を考慮することができないこともあり、MATは適用されません。生命保険事業を営む会社の一定の所得にもMATは適用されません。さらに、インドと租税条約を締結する国の居住者であり、インドに恒久的施設(Permanent Establishment - PE)をもたない外国会社にもMATは適用になりません。
また、インドグジャラート州のGIFTシティー等の国際金融サービスセンター(International Financial Services Centre - IFSC)に所在する転換可能な外国為替のみで所得を稼得しているユニット(Unit)の場合には、MATの基本税率は15%から9%に減額となります。
MATの支払税額控除
MATとして支払った税額とインド所得税法で計算された通常の法人額の差額は、MATクレジットとして15年間繰越可能です。MATクレジットは、翌年以降の年度でインド所得税法で計算される通常の法人税額がその年度のMATを上回る場合にその差額より控除可能です(1961年インド所得税法第115JAA条)(2025年インド所得税法第206条13,14,15項)。つまり、MATは通常の法人額の前払いの性質があると言えます。
Form No.29Bの提出
MATの納税が必要な納税者は、税務監査の期日(=所得税申告の期日の1か月前)までにForm No.29Bと呼ばれる様式で上記のMAT計算で用いる「調整後の会計帳簿上の利益(Book Profit)」が適切に計算されていることをインド勅許会計士から証明してもらう必要があります(1961年インド所得税法第115JB条4項、1962年インド所得税法規則第40B条)(2025年インド所得税法第206条11項)。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |


