インドでも他国と同様に、資産(Capital Asset)を譲渡した際に発生するキャピタルゲイン(含み益)は譲渡所得として所得税(Capital Gain Tax)が課税されます(インド所得税法第45条、48条)。キャピタルゲインは保有していた資産の性質とその保有期間に応じて下記の通り分離課税されます。
インドのキャピタルゲイン課税における短期・長期の区分
2024年7月23日以降
資産の区分 | 長期キャピタルゲインとみなされる期間 |
上場株式、上場債券、UTI信託、ゼロクーポン債、ビジネストラスト | 12ヶ月超 |
非上場株式、不動産(土地・建物)、その他の資産(非上場債券※1.、金、宝石等) | 24ヶ月超 |
※1.インド所得税法第2条42A項の短期キャピタルゲインの定義によらず、譲渡、償還時に負債性の性質を有している非上場債券等は保有期間に拠らずすべて短期キャピタルゲインとなります。(インド所得税法第50AA条)。
2024年7月22日以前
資産の区分 | 長期キャピタルゲインとみなされる期間 |
上場株式、上場債券、UTI信託、ゼロクーポン債 | 12ヶ月超 |
非上場株式、不動産(土地・建物) | 24ヶ月超 |
その他の資産(ビジネストラスト、非上場債券、金、宝石等) | 36ヶ月超 |
参照条文:インド所得税法第2条29AA項、42A項
インドのキャピタルゲイン課税期間区分と適用対象の税率
2024年7月23日以降
区分 | 条件 | 税率(居住者) | 税率(非居住者) |
長期キャピタルゲイン | 証券取引税(Security Transaction Tax - STT)が課税対象となる上場株式、株式投資信託、ビジネストラストの譲渡(インド所得税法第112A条) |
12.5%(12.5万ルピー超の金額に対して) |
12.5%(12.5万ルピー超の金額に対して) |
長期キャピタルゲイン | 非上場株式、非上場債券※1.の譲渡(インド所得税法第112条1項a号,b号,c号(iii)) | 12.5% | 12.5% |
長期キャピタルゲイン | その他資産の譲渡(インド所得税法第112条1項a号,b号,c号(ii)) | 12.5% | 12.5% |
短期キャピタルゲイン | 証券取引税(Security Transaction Tax - STT)が課税対象となる株式、株式投資信託、ビジネストラストの譲渡の譲渡(インド所得税法第111A条1項) | 20% | 20% |
短期キャピタルゲイン | その他資産の譲渡 | 通常の所得税率 | 35% |
※1.インド所得税法第2条42A条の短期キャピタルゲインの定義によらず、譲渡、償還時に負債性の性質を有している非上場債券等は保有期間に拠らずすべて短期キャピタルゲインとなります。(インド所得税法第50AA条)。その場合、税率は「通常の所得税率」で課税されます。
上記税率には加算税(Surcharge)及び健康教育目的税(Health and Education Cess)が別途加算されます。
2024年7月22日以前
区分 | 条件 | 税率(居住者) | 税率(非居住者) |
長期キャピタルゲイン | 証券取引税(Security Transaction Tax - STT)が課税対象となる上場株式、株式投資信託、ビジネストラストの譲渡(インド所得税法第112A条) |
10%(10万ルピー超の金額に対して) |
10%(10万ルピー超の金額に対して) |
長期キャピタルゲイン | 非上場株式、非上場債券の譲渡(インド所得税法第112条1項a号,b号,c号(iii)) | 20% | 10% |
長期キャピタルゲイン | その他資産の譲渡(インド所得税法第112条1項a号,b号,c号(ii)) | 20% | 20% |
短期キャピタルゲイン | 証券取引税(Security Transaction Tax - STT)が課税対象となる株式、株式投資信託、ビジネストラストの譲渡の譲渡(インド所得税法第111A条1項) | 15% | 15% |
短期キャピタルゲイン | その他資産の譲渡 | 通常の所得税率 | 40% |
上記税率には加算税(Surcharge)及び健康教育目的税(Health and Education Cess)が別途加算されます。
なお、基本的にキャピタルゲインは資産の譲渡により受領又は発生した対価の全額から、以下の金額を控除して計算されます(インド所得税法第48条)。
- 当該譲渡に関して専ら発生した支出
- 当該資産の取得費用及び改良費用
上記のキャピタルゲインの計算方法は、不動産(土地・建物)等を譲渡した際の日本でのキャピタルゲインの計算方法と基本的に同様です。ただ、当該資産が事業の用に供さない資産の場合には取得費の計算で減価償却費を減算しなくて良い点は、日本とインドで考え方が異なります。インド所得税法では、事業の用に供さない資産の場合にはその取得費から減価償却費分を減算する必要がないため、その分キャピタルゲインを抑えることができ、納税者有利と言えます。
キャピタルロスの損益通算と繰越欠損金
まず、キャピタルゲイン所得の内、短期キャピタルロスの損益通算は認められておりますが(インド所得税法第70条2項)、長期キャピタルロスの通算は認められておりません(インド所得税法第70条3項)。
次に、キャピタルロスが発生した年度に損益通算しきれなかった長期・短期キャピタルロスは最大8課税年度(Assessment Year)は繰越が認められています。長期キャピタルロスに関する繰越欠損金は長期キャピタルゲインのみと相殺可能ですが、短期キャピタルロス関する繰越欠損金は長期・短期のいずれのキャピタルゲインとも相殺可能です(インド所得税法第74条)。詳細はこちらをご参照ください。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |