インドでも他国と同様に、資産を譲渡した際に発生する譲渡益(以下、キャピタルゲイン)は譲渡所得として所得税がかかります。キャピタルゲインは保有していた資産の性質およびその保有期間に応じて分離課税されます。
インドのキャピタルゲイン課税における短期・長期の区分
資産(Capital Asset)を譲渡した際に発生するキャピタルゲインは譲渡所得として、譲渡した課税年度に所得税の課税対象です(1961年インド所得税法第45条)(2025年インド所得税法第67条)。キャピタルゲインは資産の譲渡の結果として受け取ったまたは生じた全対価から下記を減じて計算します。(1961年インド所得税法第48条)(2025年インド所得税法第72条)。
- 該当譲渡に完全かつ専ら関連して発生した支出
- 該当資産の取得価格および修繕費
該当資産の保有期間に応じて、以下の通りキャピタルゲインは短期保有の資産、長期保有の資産に分類され、短期保有の資産から生じるのが短期キャピタルゲイン、長期保有の資産から生じるのが長期キャピタルゲインとなります(1961年インド所得税法第2条29AA項,42A項)(2025年インド所得税第2条67項,101項)。
2024年7月23日以降
| 資産の区分 | 短期保有の資産とみなされる保有期間 |
| 上場株式、上場債券、UTI信託、ゼロクーポン債、ビジネストラスト | 12ヶ月以下 |
| 非上場株式、不動産(土地・建物)、その他の資産(非上場債券※1.、金、宝石等) | 24ヶ月以下 |
※1.短期保有の資産の定義によらず、負債性の性質を有している特定投資信託、市場連動型社債、非上場債券、非上場社債の譲渡、償還または満期時に生じるキャピタルゲインは保有期間に拠らず、すべて短期キャピタルゲインとなります。(1961年インド所得税法第50AA条)(2025年インド所得税76条1項)。
2024年7月22日以前
| 資産の区分 | 短期保有の資産とみなされる保有期間 |
| 上場株式、上場債券、UTI信託、ゼロクーポン債 | 12ヶ月以下 |
| 非上場株式、不動産(土地・建物) | 24ヶ月以下 |
| その他の資産(ビジネストラスト、非上場債券、金、宝石等) | 36ヶ月以下 |
インドのキャピタルゲイン課税期間区分と適用対象の税率
2024年7月23日以降
| 区分 | 条件 | 税率(居住者) | 税率(非居住者) |
| 長期キャピタルゲイン | 証券取引税(Security Transaction Tax - STT)が課税対象となる上場株式、株式投資信託、ビジネストラストの譲渡(インド所得税法第112A条) | 12.5%(12.5万ルピー超の金額に対して) | 12.5%(12.5万ルピー超の金額に対して) |
| 長期キャピタルゲイン | 非上場株式、非上場債券※1.の譲渡(インド所得税法第112条1項a号,b号,c号(iii)) | 12.5% | 12.5% |
| 長期キャピタルゲイン | その他資産の譲渡(インド所得税法第112条1項a号,b号,c号(ii)) | 12.5% | 12.5% |
| 短期キャピタルゲイン | 証券取引税(Security Transaction Tax - STT)が課税対象となる株式、株式投資信託、ビジネストラストの譲渡の譲渡(インド所得税法第111A条1項) | 20% | 20% |
| 短期キャピタルゲイン | その他資産の譲渡 | 通常の所得税率 | 35% |
※1.インド所得税法第2条42A条の短期キャピタルゲインの定義によらず、譲渡、償還時に負債性の性質を有しているマーケットリンク型の債権や一部に投資信託等は保有期間に拠らずすべて短期キャピタルゲインとなります。(インド所得税法第50AA条)。その場合、税率は「通常の所得税率」で課税されます。
上記税率には加算税(Surcharge)及び健康教育目的税(Health and Education Cess)が別途加算されます。
2024年7月22日以前
| 区分 | 条件 | 税率(居住者) | 税率(非居住者) |
| 長期キャピタルゲイン | 証券取引税(Security Transaction Tax - STT)が課税対象となる上場株式、株式投資信託、ビジネストラストの譲渡(インド所得税法第112A条) | 10%(10万ルピー超の金額に対して) | 10%(10万ルピー超の金額に対して) |
| 長期キャピタルゲイン | 非上場株式、非上場債券の譲渡(インド所得税法第112条1項a号,b号,c号(iii)) | 20% | 10% |
| 長期キャピタルゲイン | その他資産の譲渡(インド所得税法第112条1項a号,b号,c号(ii)) | 20% | 20% |
| 短期キャピタルゲイン | 証券取引税(Security Transaction Tax - STT)が課税対象となる株式、株式投資信託、ビジネストラストの譲渡の譲渡(インド所得税法第111A条1項) | 15% | 15% |
| 短期キャピタルゲイン | その他資産の譲渡 | 通常の所得税率 | 40% |
上記税率には加算税(Surcharge)及び健康教育目的税(Health and Education Cess)が別途加算されます。
なお、基本的にキャピタルゲインは資産の譲渡により受領又は発生した対価の全額から、以下の金額を控除して計算されます(インド所得税法第48条)。
- 当該譲渡に関して専ら発生した支出
- 当該資産の取得費用及び改良費用
上記のキャピタルゲインの計算方法は、不動産(土地・建物)等を譲渡した際の日本でのキャピタルゲインの計算方法と基本的に同様です。ただ、当該資産が事業の用に供さない資産の場合には取得費の計算で減価償却費を減算しなくて良い点は、日本とインドで考え方が異なります。インド所得税法では、事業の用に供さない資産の場合にはその取得費から減価償却費分を減算する必要がないため、その分キャピタルゲインを抑えることができ、納税者有利と言えます。
キャピタルロスの損益通算と繰越欠損金
まず、キャピタルゲイン所得の内、短期キャピタルロスの損益通算は認められておりますが(インド所得税法第70条2項)、長期キャピタルロスの通算は認められておりません(インド所得税法第70条3項)。
次に、キャピタルロスが発生した年度に損益通算しきれなかった長期・短期キャピタルロスは最大8課税年度(Assessment Year)は繰越が認められています。長期キャピタルロスに関する繰越欠損金は長期キャピタルゲインのみと相殺可能ですが、短期キャピタルロス関する繰越欠損金は長期・短期のいずれのキャピタルゲインとも相殺可能です(インド所得税法第74条)。詳細はこちらをご参照ください。
執筆・監修
|
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
|
新井 辰和 | Tatsuo Arai |


