インド国内法人が自主清算する場合には、一連の清算手続きの中で、残余財産の分配を通して株主へ資金還流を行います。その分配額のうち累積利益額までの分配はみなし配当として、残余財産の分配を受ける日本親会社(株主)がインドで課税されます(インド所得税法第2条22項c号、9条1項iv号)。
(みなし)配当時に発生する所得税
インド所得税法第115A条は非居住者が受け取る配当に対する所得税率を20%(加算税(Surcharge)及び健康教育目的税(Health and Education Cess)が加わる)と規定しています。一方で日印租税条約第10条2項では、配当を受ける法人は支払国で10%を上限に課税できると規定しており、この日印租税条約の規定はインド所得税法に優先して適用されます(インド所得税法第90条)。ただ一方で、みなし配当に関する課税に対しては、租税条約を適用できないという意見もあり最終的なポジションは慎重に検討する必要があります。
また配当を支払うインド法人は支払い時に源泉徴収税(Tax Deducted at Sources - TDS)を源泉徴収する必要があり、日印租税条約を適用しない場合のTDSは20%(インド所得税法第195条、財政法)、適用する場合のTDSは10%となります。
なお従来インド内国法人が配当支払い時に負担していた配当税(Dividend Distribution Tax-DDT)は2020年度国家予算にて撤廃されました。よって、配当は配当所得として株主側のみで課税されます。
キャピタルゲインに発生する所得税
次にキャピタルゲインについてです。自主清算時に上記のみなし配当額を超えて、日本親会社(株主)が現金や資産をインド法人からの受け取った場合には、受け取った額又はその市場価値からみなし配当額を差し引いた額がキャピタルゲインとなります(同法第46条)。所得税率は短期キャピタルゲインと長期キャピタルゲインでそれぞれ規定されており、長短分類は下記の通りです(同法第2条29AA項、42A項)。
資産の区分 | 保有期間 |
長期キャピタルゲイン | 24か月超 |
短期キャピタルゲイン | 24か月以内 |
長短分類ごとの税率は下記の通りです(同法第条112条1項c号iii、財政法)。
資産の区分 | 税率 |
長期キャピタルゲイン | 12.5%で課税(+加算税、健康教育目的税) |
短期キャピタルゲイン | 35%で課税(+加算税、健康教育目的税) |
なお、上記の表は清算対象の会社がインド国内の非上場会社であり、株主はインド非居住者である前提です。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |