インド子会社・関連会社の普通株式を保有する外国企業は、資金還流方法として「配当」を選択することが可能です。配当は、中間配当(interim dividend)と期末配当(final dividend)の双方を含みます。(2013年インド会社法第2条35項)
中間配当
定款で定める会社は、事業年度の決算前に取締役会の決議により中間配当を行うことが可能です(会社法第123条3項)。
期末配当
期末配当は年次株主総会(Annual General Meeting - AGM)の普通決議により行うことが可能です(会社法第102条2項)。なお、配当金額の詳細は取締役報告書(Director's Report)に記載する必要があります(会社法第134条3項k号)。なお、これらの手続きは中間配当には適用されません。
インド会社法で規定される剰余金・準備金
2013年インド会社法の別表III(Schedule III)で規定される剰余金・準備金(Reserves and Surplus)は以下の通りです。
- 資本準備金(Capital Reserves)
- 資本償還準備金(Capital Redemption Reserve)
- その他資本剰余金(Securities Premium Reserve)
- 社債償還準備金(Debenture Redemption Reserve)
- 再評価準備金(Revaluation Reserve)
- 株式オプション(Share Options Outstanding Account)
- 任意積立金(Other Reserves)
- その他の剰余金(Other)
- 利益剰余金(Surplus)
インドからの配当支払い時の上限は?
配当原資とすることができるのは、当期利益、過去のいずれかの事業年度又は複数の事業年度の利益又は中央政府・州政府から配当支払いを目的として受領した資金です(会社法第123条1項)。
また、いずれの年度にも配当支払いに十分な原資が存在しない場合、剰余金(Free Reserves)を原資として配当を支払うことが可能です。当該剰余金は、最新の監査済み財務諸表に基づき、配当可能な準備金・剰余金から、配当不能金を差し引いた配当可能な剰余金を意味します(配当原資として除外される金額:その他資本剰余金(Securities Premium)、資本償還準備金(Capital Redemption Reserve)、再評価準備金(Revaluation Reserve)、合併積立金(Amalgamation Reserve))。
また、その際には以下の条件を充足する必要があります。(2014年インド会社法細則(配当の宣言及び支払)第3条)
- 配当率(配当額/ 払込資本金)が直前3年間の平均以下であること。
※過去3年間一度も配当されていない場合には任意の比率で配当可能。 - 配当額が払込資本金及び剰余金(Free Rerserves、直近の監査済み財務諸表記載の金額による)の合計額の10%を超えないこと。
- 配当支払い後の剰余金(Free Reserves)が払込資本金の15%を下回らないこと。
配当に関する税務論点
インド所得税法第115A条は非居住者が受け取る配当に対する所得税率を20%(+加算税、健康教育目的税)と規定しています。一方で日印租税条約第10条2項では、配当を受ける法人は支払国で10%を上限に課税できると規定しており、この日印租税条約の規定はインド所得税法に優先して適用されます(インド所得税法第90条)。
また配当を支払うインド法人は支払い時に源泉徴収税(Tax Deducted at Sources - TDS)を源泉徴収する必要があり、日印租税条約を適用しない場合のTDSは20%(+加算税、健康教育目的税)(インド所得税法第195条、財政法)、適用する場合のTDSは10%となります。
なお従来インド内国法人が配当支払い時に負担していた配当分配税(Dividend Distribution Tax - DDT)は2020年度国家予算にて撤廃されました。よって、配当は配当所得として株主側のみで課税されます。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |