2009年10月1日より税務紛争の早期解決を目的として、紛争解決機構(Dispute Resolution Panel - DRP)がインド国内のデリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイ等の各主要都市に設置されました。更正処分通知に不服がある納税者は、所得税コミッショナーに不服申し立てする代替手段として、DRPに不服申し立てすることが可能です。ただ、実務上はDRPでは納税者有利の裁決がされる可能性は極めて低いと言われており、税務審判所(Income Tax Appellate Tribunal – ITAT)へいち早く上訴するためのファストトラックルートとして利用されるケースが一般的です。なお、一連の所得税法の不服申し立てや税務訴訟については、こちらをご参照ください。
紛争解決機構を利用可能な納税者
DRPを利用可能な適格納税者(Eligible Assessee)は下記の通りです(1961年インド所得税法第144C条)(2025年インド所得税法第275条)。
- 移転価格関連の申告所得の更正の指摘を移転価格調査官から受ける者
- 非居住者または外国会社
よって、インド国内取引のみに関して更正の指摘を受けるインド内国会社は、DRPへの不服申し立てを行うことができません。
紛争解決機構での解決までの流れ
納税者は更正処分通知のドラフト版であるDraft Orderを受領してから30日以内にDRPに対して不服申し立ての申請を行う必要があります。インド所得税法は特にDraft Orderの発行期日は規定していませんが、Draft Orderが発行される前には移転価格の調査官(Transfer Pricing Officer - TPO)から納税者及び税務調査の調査官(Assessing Officer - AO)にTPO Orderが発行されます。このTOP Orderは更正処分通知の最終版であるFinal Orderの期日の60日前までに発行され(1961年インド所得税法第92CA条3,3A項)(2025年インド所得税法第166条6,7項)、税務調査の調査官(Assessing Officer - AO)はその後にDraft Orderを納税者に発行する流れとなります。
納税者から不服申し立てを受けたDRPは、Draft Order、不服申し立て、納税者への追加質問への回答等を考慮し、税務調査担当官に対して当該税務調査に関する指示(Direction)を出します。この指示(Direction)にて、DRPはDraft Orderでの更正処分額を承認、減額、増額することもできますが、Draft Orderでの更正処分額を差し戻す(Set aside)ことはできません。なお、納税者に不利な決定がされる場合には、納税者に聴衆の機会が与えられます。DRPは、直接税中央委員会が選任した所得税プリンシパルコミッショナー又は所得税コミッショナー3名で構成されますが、3名のDRPメンバーの意見が割れた場合は多数決にて裁決されます。
Draft Orderが発行された月末から9か月以内にDRPはこの指示(Direction)を出すことが求められます。そしてDRPから指示(Direction)を税務調査担当官が受領した月末から1か月以内に、税務調査担当官は当該税務調査を完了させる必要があります。
DRPの指示(Direction)の結果として出された更正処分通知の最終版であるFinal Orderに不服がある納税者は、所得税コミッショナー(Commissioner of Income Tax(Appeals) - CIT(A)) のプロセスを経ずに、税務審判所(Income Tax Appellate Tribunal – ITAT)へ不服申し立てを行うことが可能です(1961年インド所得税法第253条1項d号)(2025年インド所得税法第362条1項d号)。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |


