インド国内法人がその株主に資金還流する方法としてはいくつかの方法が考えられます。いずれの方法で資金還流していくかは税負担効率、還流金額の上限および実行までのコンプライアンス負荷を考慮した上で最適な方法を検討することが求められます。
一般的な資金還流方法の比較
| ①サービス対価 | ②配当 | ③自己株式の取得 | ④減資 | |
| 株主側での課税 |
日印租税条約:10% インド所得税法:20% |
日印租税条約:10% インド所得税法:20% |
キャピタルゲイン課税、株主がプロモーターに該当する場合には追加課税 詳細はこちら |
<みなし配当> 日印租税条約:10% インド所得税法:20% <キャピタルゲイン課税> LTCG:12.5% STCG:20% / 通常の所得税率 |
| 還流上限 | なし | あり | あり | NCLTの承認が必要であるが基本的に上限はなし |
| 実行承認 | なし | 取締役会/株主総会での承認 | 取締役会/株主総会での承認 | 取締役会及び株主総会での承認かつNCLTの承認 |
①サービス対価
株主からインド法人がいずれかのサービス提供を受け、そのサービス対価の支払いとして資金を還流する方法です。サービスの内容としては、技術上の役務に対する料金(Fee for Technical Services - FTS)やロイヤルティ等が一般的です。
インド所得税法では、非居住者が受け取る技術上の役務に対する料金(Fee for Technical Services - FTS)やロイヤルティに対する所得税率を20%(+加算税、教育目的税)と規定しています(1961年インド所得税法第115A条)(2025年インド所得税法第207条)。一方で日印租税条約の軽減税率を適用する場合には所得税率は10%となります。
②配当
インド会社法の規定に基づいて株主に配当を支払う方法です。インド会社法は配当上限額を規定しており、利益がでている会計年度は配当での資金還流が使いやすくなります。詳細はこちらでまとめています。
インド所得税法では、非居住者が受け取る配当に対する所得税率を20%(+加算税、教育目的税)と規定しています(1961年インド所得税法第115A条)(2025年インド所得税法第207条)。一方で日印租税条約の軽減税率を適用する場合には所得税率は10%となります。
なお、インド内国法人が配当支払い時に負担していた配当税(Dividend Distribution Tax-DDT)は2020年度国家予算にて撤廃されました。よって、配当は配当所得として株主側のみで課税されます。
③自己株式の取得
インド会社法の規定に基づいて株主から株式を買い戻す方法です。
自己株式の取得時に買戻しを行う法人側に課せられていた株式買戻税(Buy Back Tax - BBT)は2024年10月以降廃止となり、自己株式の取得に関しては自己株の買戻しを行う会社側ではなく、株主側で課税される制度となっています。2026年4月以降には株主側でキャピタルゲイン課税として課税されるようになっています。詳細はこちらでまとめています。
④減資
「②配当」及び「③自己株式の取得」は取締役会や株主総会での決議で実行が可能ですが、減資の実行には会社法審判所(NCLT)の承認が必要であり、一定の時間及びコストがかかります。そのため、一般的に減資は十分な累積利益が無い状態の会社が自己株取得の上限額を超えて資金還流を希望する場合等に採用される方法になります。
次に、税務上の取り扱いについてです。
減資を通して株主に支払われる払戻額のうち累積利益額まで(上記の図解の30部分に該当)はみなし配当となります(1961年インド所得税法第2条22項d号)(2025年インド所得税法第2条40項d号)。配当に関して発生する所得税は、「配当」と同様になります。
次に、キャピタルゲイン課税(譲渡所得課税)の計算についてです。みなし配当とされる部分を除いた金額をキャピタルゲイン計算上の対価とし、そこから消滅した株式に対応する取得価額を控除して、キャピタルゲインまたはキャピタルロスを計算します。上記の図解で考えると、消滅した株式に対応する株式取得金額と資本金相当額(減資を通して株主が受け取った額からみなし配当額を差し引いた額)の差額の20部分がキャピタルゲインとなります。
キャピタルゲインの所得税率は短期キャピタルゲインと長期キャピタルゲインでそれぞれ規定されており、株式の保有期間で長短分類が決まります。キャピタルゲインの詳細はこちらでまとめています。
| 資産の区分 | 保有期間 |
| 長期キャピタルゲイン |
・減資を行う会社が上場企業の場合:12か月超 ・減資を行う会社が非上場企業の場合:24か月超 |
| 短期キャピタルゲイン |
・減資を行う会社が上場企業の場合:12か月以下 ・減資を行う会社が非上場企業の場合:24か月以下 |
| 資産の区分 | 税率 |
| 長期キャピタルゲイン | 12.5%(+加算税、健康教育目的税)で課税 |
| 短期キャピタルゲイン |
・減資を行う会社が上場企業の場合:20%(+加算税、健康教育目的税)で課税 ・減資を行う会社が非上場企業の場合:通常の所得税率で課税 |
減資による株式の消滅は1961年インド所得税法第2条47項/2025年インド所得税法第2条109項に定める「Transfer」に該当するかは、争点でしたが、減資による株式の消滅も「Transfer」に該当しキャピタルゲイン課税の対象になりうる旨の最高裁の判決が1997年9月に出ています(The Hon’ble Supreme Court / Kartikeya v. Sarabhai v. CIT: 228 ITR 163)。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |


