インド国内で源泉徴収の対象となるインド国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、原則として、源泉徴収税(Tax Deducted at Sources - TDS)を源泉徴収しなければなりません(インド所得税法CHAPTER XVII)。インドでは源泉徴収される源泉徴収税は、その所得の性質によりTDS(Tax Deducted at Source)とTCS(Tax Collected at Source)の2種類があります。源泉徴収義務は支払いを行う側にあり、源泉徴収を忘れた場合には自身で負担して納税しなければならなくなる可能性があることに注意が必要です。
また、非居住者に対して支払を行う際、インドとその非居住者等の居住地国との間で租税条約が結ばれている場合には、その租税条約に定めるところにより、インド国内税法に基づく一定の要件を満たすことにより租税条約に規定された税率を適用することが可能です(インド所得税法第90条2項)。
なお、源泉徴収者は予め源泉徴収番号(Tax Deduction Account Number-TAN)を取得し、被源泉徴収者の納税番号(Permanent Account Number - PAN)と自身の源泉徴収番号を紐づける必要があります。紐づけは、後述の四半期毎の源泉徴収の申告を通して行われます。
源泉徴収が必要になる支払は?
源泉徴収が必要になる代表的な支払い及びその源泉徴収税率は下記の通りです。なおそれぞれの支払には免税金額が設けられており、免税金額閾値を超える個別 / 年間支払金額に対して源泉徴収が必要となります。
支払項目 | 源泉徴収税率 | 根拠条文(インド所得税法) |
給与 | 個人所得税の計算により変動 | 第192条 |
貸付金の利子 | 10% | 第194A条 |
専門家費用 | 10% | 第194J条 |
仲介料(コミッション) |
2024年9月30日以前:5% 2024年10月1日以降:2% |
第194H条 |
契約に基づく支払 | 1% or 2% | 第194C条 |
賃借料(土地、建物) | 10% | 第194I条 |
賃借料(工場、設備機械) | 2% | 第194I条 |
源泉徴収額の納付及び申告期限はいつ?
上述の所得に関し源泉徴収した金額は翌月7日までに納税する必要があります(インド所得税法細則第30条)。また四半期ごとに源泉徴収額の申告義務があり、給与の源泉徴収税についてForm 24Q、給与以外の支払いに関する源泉徴収税についてはForm 26Q、Form27Qを用いて下記の期限内に源泉徴収税のWEBページ(TRACES portal)にて申告を行います(インド所得税法第200条3項、インド所得税法細則第31A条)。また、この四半期ごとの申告書は、申告することが求められている年度から6年経過後は修正することができません(インド所得税法第200条3項但し書き2)。
対象時期 | 申告期限 |
第1四半期(4-6月期) | 7月31日 |
第2四半期(7-9月期) | 10月31日 |
第3四半期(10-12月期) | 1月31日 |
第4四半期(翌1-3月期) | 5月31日 |
源泉徴収証明書(Form 16 & Form 16A)の発行について
被源泉徴収側は源泉徴収者から源泉徴収証明書を受け取ることにより、適切に源泉徴収税の納付及び申告が行われたことを確認可能です。給与支払者は1年に1度、翌年の6月15日までに被源泉徴収者に源泉証明書(Form 16)を交付する必要があります。また給与以外の支払いに関しては四半期に1度、申告日より15日以内に源泉証明書(Form 16A)を被源泉徴収側に交付する必要があります(インド所得税法第203条、インド所得税法細則第31条)。
被源泉徴収者の控除金額(クレジット)の確認方法
支払いから源泉徴収された源泉徴収税は、被源泉徴収者のPAN番号と紐づけられています。被源泉徴収者は所得税申告時に支払税額からの控除が可能です。源泉徴収者が納付・申告後、被源泉徴収者はForm26ASと呼ばれる様式で控除可能金額が確認可能です。
源泉徴収税にかかる延滞利息、遅延金、ペナルティー
インドの源泉徴収税にかかる延滞利息・ペナルティーには納付にかかるものと申告にかかる種類があります。
- 源泉徴収対象の支払にもかかわらず源泉徴収が漏れていた又は納付が遅延した場合:(インド所得税法第201条1A項):源泉徴収漏れにかかる延滞利息は1.0%/月、源泉徴収後の納付遅延にかかる延滞利息は1.5%/月で発生します。
- 申告の遅延にかかる遅延金:期日以内に源泉徴収税の四半期申告(Form 26Q、Form27Q)を行わなかった場合には、200ルピー/日の遅延金が課せされます(インド所得税法234E条)。
加えて、所得税当局の担当官は四半期申告(Form 26Q、Form27Q)を行わなかった納税者や不正確な申告をした納税者に対して、10,000~100,000ルピーのペナルティを課すこともできます(インド所得税法271H条)。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |