インド国内で源泉徴収の対象となるインド国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、原則として、源泉徴収税(Tax Deducted at Sources - TDS)を源泉徴収しなければなりません。インドでは源泉徴収される源泉徴収税は、その所得の性質によりTDS(Tax Deducted at Source)とTCS(Tax Collected at Source)の2種類があります。源泉徴収義務は対価の支払いを行う者にあります。
目次
- 源泉徴収が必要になる支払項目
- 源泉徴収額の納付及び申告期限
- 源泉徴収証明書Form 130(旧Form 16)やForm 131(旧Form 16A)の発行
- 被源泉徴収者の控除金額(クレジット)の確認方法
- 源泉徴収税にかかる延滞利息、遅延金、ペナルティー
- 非居住者への支払い時に関する源泉徴収税
源泉徴収が必要になる支払項目
源泉徴収が必要になる代表的な支払い及びその源泉徴収税率は下記の通りです。なおそれぞれの支払には源泉徴収税の源泉徴収が必要となる閾値が設けられており、非課税金額の閾値を超える支払額に対して源泉徴収が必要となります。
| 支払項目 | 源泉徴収税率 | 閾値 | 根拠条文 |
| 給与 | 給与受領者に適用される個人所得税の平均税率 | 個人所得税の非課税額 |
1961年インド所得税法第192条 2025年インド所得税法第392条 |
| 配当 | 10% | NA |
1961年インド所得税法第194条 2025年インド所得税法第393条 Table No.7 |
| 貸付金等の利子 | Rates in force | 年間総額5万ルピー 等 |
1961年インド所得税法第194A条 2025年インド所得税法第393条 Table No.5(ii) |
| 専門家費用 | 10% | 年間総額5万ルピー |
1961年インド所得税法第194J条 2025年インド所得税法第393条 Table No.6(iii) |
| 技術的役務 | 2% | 年間総額5万ルピー |
1961年インド所得税法第194J条 2025年インド所得税法第393条 Table No.6(iii) |
| 仲介料(コミッション) | 2% | 年間総額2万ルピー |
1961年インド所得税法第194H条 2025年インド所得税法第393条 Table No.1(ii) |
| 契約に基づく支払 |
契約先が個人:1% 契約先が個人以外:2% |
支払い金額が3万ルピー 又は 年間総額10万ルピー |
1961年インド所得税法第194C条 2025年インド所得税法第393条 Table No.6(i) |
| 賃借料(土地、建物) | 10% | 1か月あたり5万ルピー |
1961年インド所得税法第194-I条 2025年インド所得税法第393条 Table No.2(ii) |
| 賃借料(工場、設備機械) | 2% | 1か月あたり5万ルピー |
1961年インド所得税法第194-I条 2025年インド所得税法第393条 Table No.2(ii) |
| 個人払いの賃借料 | 2% | 1か月あたり5万ルピー |
1961年インド所得税法第194-IB条 2025年インド所得税法第393条 Table No.2(i) |
源泉徴収額の納付及び申告期限
上述の所得に関し源泉徴収した金額は翌月7日(例外として、3月分は4月30日)までに納税する必要があります(1962年インド所得税法規則第30条2項)(2026年インド所得税法規則第218条2項)。また四半期ごとに源泉徴収税の申告義務があり、給与の源泉徴収税についてForm 138(旧Form 24Q)、給与以外の支払いに関する源泉徴収税についてはForm 140(旧Form 26Q)を用いて下記の期限内に源泉徴収税のWEBページ(TRACES portal)にて申告を行います(1961年インド所得税法第200条3項、1962年インド所得税法規則第31A条)(2025年インド所得税法第397条3項b号、2026年インド所得税法規則第219条)。また、この四半期ごとの申告書は、申告することが求められている年度から2年経過後は修正することができません(2025年インド所得税法第397条3項f号)。
| 対象時期 | 申告期限 |
| 第1四半期(4-6月期) | 7月31日 |
| 第2四半期(7-9月期) | 10月31日 |
| 第3四半期(10-12月期) | 1月31日 |
| 第4四半期(翌1-3月期) | 5月31日 |
なお、源泉徴収者は予め源泉徴収番号(Tax Deduction Account Number-TAN)を取得し、被源泉徴収者の納税番号(Permanent Account Number - PAN)と自身の源泉徴収番号を紐づける必要があります。紐づけは、この四半期毎の源泉徴収の申告を通して行われます。
源泉徴収証明書Form 130(旧Form 16)やForm 131(旧Form 16A)の発行
被源泉徴収側は源泉徴収者から源泉徴収証明書を受け取ることにより、適切に源泉徴収税の納付及び申告が行われたことを確認可能です。給与支払者は1年に1度、翌年の6月15日までに被源泉徴収者に源泉証明書Form 130(旧Form 16)を交付する必要があります。また給与以外の支払いに関しては四半期に1度、申告日より15日以内に源泉証明書Form 131(旧Form 16A)を被源泉徴収側に交付する必要があります(1961年インド所得税法第203条、1962年インド所得税法規則第31条)(2025年インド所得税法第395条4項、2026年インド所得税法規則第215条)。
被源泉徴収者の控除金額(クレジット)の確認方法
支払いから源泉徴収された源泉徴収税は、被源泉徴収者のPAN番号と紐づけられています。被源泉徴収者は所得税申告時に支払税額からの控除が可能です。源泉徴収者が納付・申告後、被源泉徴収者はForm 168(旧Form26AS)と呼ばれる様式で控除可能金額が確認可能です。
源泉徴収税にかかる延滞利息、遅延金、ペナルティ
インドの源泉徴収税にかかる延滞利息、ペナルティーには納付にかかるものと申告にかかる種類があります(1961年インド所得税法第201条1A項、第234E条、第271H条)(2025年インド所得税法第398条3項a号、第427条、第461条)。
- 源泉徴収対象の支払にもかかわらず源泉徴収が漏れていた場合の延滞利息:源泉徴収するべきであった月から実際に源泉徴収した月までの期間に対して1.0% / 月が発生します。
- 源泉徴収をしたにもかかわらず納付が遅延した場合の延滞利息:源泉徴収した月から実際に納付した月までの期間に対して1.5% / 月が発生します。
- 四半期申告を期日以内に申告しない場合の遅延金:期日以内に源泉徴収税の四半期申告を行わなかった場合には、200ルピー / 日の遅延金が課せされます。
- 四半期申告を期日以内に申告しない場合や不正確な内容で申告した場合のペナルティ:所得税当局の税務調査官は10,000ルピー~100,000ルピーのペナルティを課すことができます。
非居住者への支払い時に関する源泉徴収税
非居住者に対して支払を行う際、インドとその非居住者の居住地国との間で租税条約が結ばれている場合には、その租税条約に定めるところにより、インド国内税法に基づく一定の要件を満たすことにより租税条約に規定された税率を適用することが可能です(1961年インド所得税法第90条2項)(2025年インド所得税法第159条4項)。
日本とインド間には日印租税条約が締結されているため、日本法人への支払い時には日印租税条約の規定する軽減税率を源泉徴収税率として適用することができます。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |


