ITRとはインド所得税局へ提出する税務申告書を指す、Income Tax Returnの略です。Returnとは英語で申告書を意味し、還付などの税金が戻ってくることを指すわけではありません。日本では一般のサラリーマンは年末調整を行うことによって個人での所得税申告が免除されますが、インドでは個人所得税が課税される基準額以上の所得のある全ての個人の納税者に所得税申告を行うことが義務付けられています(インド所得税法第139条1項)。
通常は、インドに出向している駐在員の方は、インド国内源泉の所得として、インドで稼得している給与及びインドの銀行口座の利息(日本とは異なり、数%の利息がつくので利息だけでもそれなりの金額になることがあります。)を合算して申告します。また居住ステータスによっては、全世界所得の所得税申告が必要になるので専門家へ依頼し正確な申告を行うことをお勧めします。
インドの税務年度は、4月~翌3月を採用しており、申告当該年度をFinancial Yearといい、申告書提出年をAssessment Yearと呼んでいます。つまり、2023年度(2023年4月1日~2024年3月31日)の申告書は、2014年に提出するので常に1年ずつAssessment Yearが遅れてくることになります。税務調査の通知などを受領した場合には、いずれのFinancial Year又はAssessment Yearに対する通知を受領したのかをきちんと確認することが大切です。
<個人の申告>
申告期限:対象年度の翌年7月31日
<法人の申告>
申告期限:対象年度の翌年10月31日(移転価格対象企業は11月30日まで延長)
法人については、インド内国法人並びに外国法人も同一の申告期限です。外国法人については、申告書へ署名するためのDSC取得等に時間を要するので、余裕を持って準備を始めることが必要になります。外国法人はインド側で源泉徴収されていた場合であっても所得税申告が求められます。他国では源泉徴収のみで課税関係が終了する源泉分離課税方式が一般的ですが、インドでは同方式は採用されておらず、源泉徴収で課税された後であっても申告を必要とする方式となっています。なお、源泉徴収で納税額をインドの取引先企業が適切に源泉徴収し、納税している場合は、外国法人は所得税申告の際に追加納税が必要になることは一般的にはありません。
執筆・監修
鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
新井 辰和 | Tatsuo Arai |