インドでは所得税申告書のことをITRと略して呼ぶことがありますが、ITRとはIncome Tax Returnの略です。Returnとは英語で納税申告書を意味し、還付などの税金が戻ってくることを指すわけではありません。日本では雇用主が年末調整を行うことによって、サラリーマン等の給与所得者は自ら所得税申告を行うことは求められない場合が一般的ですが、インドでは非課税枠以上の所得のある全ての個人に所得税申告を行うことが義務付けられています。また、すべての会社にも所得税申告を行う義務があります。個人所得税の概要はこちら、法人税の概要はこちらを参照ください。
目次
所得税申告書の申告期日
インドの税務年度は、個人/法人によらず4月1日から翌年3月31日の1年間です(1961年インド所得税法第2条9項、3条)(2025年インド所得税法第3条)。そのため、インドの税務年度は各法人の採用する会計年度とは連動していません。下記の申告期日までに、所得税申告書の申告を提出する必要があります(1961年インド所得税法第139条)(2025年インド所得税法第263条)。
| 申告者 | 申告期日 | |
| 1 | 移転価格税制のコンプライアンスが適応になる会社 | 対象税務年度の翌年11月30日 |
| 2 | 1.以外の会社 | 対象税務年度の翌年10月31日 |
| 3 | 税務監査等の監査を受ける個人等 | 対象税務年度の翌年10月31日 |
| 4 | 税務監査等の監査を受けるファームのパートナー | 対象税務年度の翌年10月31日 |
| 5 | 1~4.以外の個人等 | 対象税務年度の翌年7月31日 |
実際の申告期日の延長の発表があることもインドでは稀ではないため、実際の申告期日がいつなのかはその年ごとに確認が求められます。なお、所得税申告義務があるにもかかわらず、申告を行わなかった場合のペナルティ等はこちらをご参照ください。
申告期日後の遅延申告、修正申告、更新申告
| 所得税申告書の種類 | 概要 | 申告期日 | 参照条文 | |
| 1 | 所得税申告書(Original Return) | 本来の所得税申告書 | 上述の通り | 1961年インド所得税法139条1項/2025年インド所得税法263条1項 |
| 2 | 遅延申告書(Belated Return) | 1.を期日内に提出しなかった場合の申告に使用する所得税申告書 | 翌会計年度の12/31(該当税務年度末の9か月後)又は税務調査の完了のいずれか早い日 |
1961年インド所得税法139条4項/2025年インド所得税法263条4項
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| 3 | 修正申告書(Revised Return) | 1.もしくは2.に修正が必要な箇所が見つかった場合の申告に使用する所得税申告書 | 翌会計年度の12/31(該当税務年度末の9か月後)又は税務調査の完了のいずれか早い日 | 1961年インド所得税法139条5項/2025年インド所得税法263条5項 |
| 4 |
更新申告書(Updated Return)
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過年度の所得額の修正をする場合の申告に使用する所得税申告書 ・翌税務年度末から1年以内に申告した場合:25%の追加税額 ・翌税務年度末から1年超2年以内の場合:50%の追加税額 ・翌税務年度末から2年超3年以内の場合:60%の追加税額 ・翌税務年度末から3年超4年以内の場合:70%の追加税額 |
翌税務年度末から48か月が経過するまで | 1961年インド所得税法139条4項、140B条/2025年インド所得税法263条6項、267条 |
遅延申告を申告する際には、5,000ルピーのペナルティが科されます。ただし、総所得が50万ルピーを超えない場合のペナルティは1,000ルピーに軽減されます(1961年インド所得税法第234F条)(2025年インド所得税法第428条)。
なお、更新申告は下記のような場合等には利用することができません。
- 更新申告にて損失に関する申告の場合
- 総納税義務を減額する効果がある申告の場合
- 還付金が発生又は増加する場合
- すでに一度更新申告を申告している場合 等
所得税申告書の遅延提出の容認申請
納税者の困難を回避することが望ましいと考えられる場合には、インド所得税当局の担当官に所得税申告書の期日後に納税者が申請する税額控除や還付等に関する申請を容認する権限が与えられます(1961年インド所得税法第119条2項b号)(2025年インド所得税法第239条3項b号)。修正申告の期日は翌税務年度の12/31(該当税務年度末の9か月後)と短く、かつ更新申告書も追加の還付金が生じる場合には利用できません。よって、修正申告の期日後に追加で還付請求を試みる場合には、個々に容認申請をインド所得税当局に提出する必要があります。
直接税中央委員会(Central Board of Direct Taxes - CBDT)は2024年10月1日付で通達(Circular No. 11 /2024)を発して、還付請求や繰越欠損金の認識及び相殺に係るこの申告書の遅延提出の容認申請(Applications for condonation of delay in filing the Income tax returns)に関して明確化しました。2024年10月1日以降、納税者は税務年度末から6年以内であれば、この容認申請を提出することができるとし、インド所得税当局はできる限り提出があってから6か月以内に処理するよう求められています。この通達にて、容認申請の手続きに一定の明確化が与えられ、迅速的な対応が期待できるようになりました。
所得税申告書の様式
所得税申告書の様式は、所得の種類や納税者の種類によって以下7つの種類に分かれています(1962年インド所得税法規則第12条)。実務上はこれらの様式の詳細はその年ごとに改正があるため、その年の様式の発表があって以降に実際の所得税申告を行うことができます。
- Form ITR-1 (Form SAHAJ):総所得額500万ルピー以下の給与所得、不動産所得、一部の譲渡所得等に関する、通常の居住者である個人のための所得税申告書である。シンプルという意味であるヒンディー語の‘Sahaj’と別名を持つ。
- Form ITR-2:事業・専門職所得がなく、所得額が500万ルピーを超える者や譲渡所得や海外所得を有する個人のための所得税申告書である。
- Form ITR-3:事業・専門職所得がある個人やファームのための所得税申告書である。
- Form ITR-4 (Form SUGAM):推定課税制度にて事業・専門職所得を計算する個人やファームのための所得税申告書である。簡易という意味であるヒンディー語の‘Sugam’と別名を持つ。
- Form ITR-5:ファーム、LLP、AOP、BOIのための所得税申告書である。
- Form ITR-6:会社のための所得税申告書である。
- Form ITR-7:1961年インド所得税法第139条4A項、4B項、4C項、4D項の申告が必要な会社のための所得税申告書である。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |


