インド所得税法第139条では、全ての会社(インド内国会社及び外国会社)は確定申告書(Income Tax Return - ITR)を提出しなければならないと規定されています。
よって非居住である日本企業(外国企業)であっても、インド子会社及び取引先から役務提供契約・ロイヤリティ契約などに基づきインド源泉の所得が発生している場合は、インド側で源泉徴収されていても申告が必要です。
他国では源泉徴収のみで課税関係が終了する、源泉分離課税方式が一般的ですが、インドでは同方式は採用されておらず、源泉徴収で課税された後であっても、申告を必要とする方式となっています。
必要なコンプライアンス
- 税務年度(4月~翌年3月)の10月31日までに所得税申告
- 対象取引が関連会社間で行われた場合には、移転価格証明書の添付
- 対象取引が関連会社間で行われ、かつ年間取引金額が1000万ルピー以上の場合は移転価格の文書化義務(ローカルファイル)
申告が免除されるケース
2023年インド国家予算案にて、所得税法第115A条の規定が改正され、以下の2つの要件を満たす場合、外国企業の所得税申告が免除されます。
- 外国企業の所得が以下の所得のみで構成されていること
- 配当
- 特定の利息
- ロイヤリティ
- 技術役務に対する対価
インド所得税法(国内税法)第115A条に規定される以上の税率で源泉徴収が行われていること(以下参照)
所得の種類 | 税率 |
配当(Dividends) | 20% |
特定の利息(Interest) | 20% |
ロイヤリティ(Royalty) | 20% |
技術役務に対する対価(Fee for Technical Service - FTS) | 20% |
※別途サーチャージ、健康教育目的税(Education and Health Cess)が加算され、実効税率は下記の通りです。
Total Income(ルピー) | TDS | サーチャージ | 教育目的税 | 実行税率 |
~ 1千万 | 20% | 0% | 4% | 20.8% |
1千万~1億 | 20% | 2% | 4% | 21.216% |
1億~ | 20% | 5% | 4% | 21.84% |
なお、日印租税条約を適用した場合には10%が上限に設定されています。
申告に際して準備が必要となるもの
- 申告書署名者(Authorized Sigatory)のDSC
現在インドの確定申告書提出は全てオンライン化されています。申告書提出の際には、電子署名(Digital Signature Certificate - DSC)を添付する必要があります。取得に際しては添付書類の公証・アポスティーユ取得から認証プロセスまでが含まれており、時間を要しますので最低でも1ヵ月の猶予を持ち前広に準備することが必要です。 - 源泉徴収証明書(TDS Certificate又はForm 16A)の入手
取引日時、総額、源泉徴収額などの取引の明細を記載した、源泉徴収の証明書(Form 16A)が支払企業より発行されます。申告書作成の際には、同様式に記載された取引詳細を参照しますので、申告書作成前に支払企業より入手しておく必要があります。 - 法人PAN
申告書作成の際に、納税企業のIDとして利用される情報となります。法人PAN取得に際しては法人登記簿謄本の公証・アポスティーユ取得したものが必要となり、取得には3週間ほどの期間を要します。前述の申告署名者のPAN及びDSCの取得と合わせて準備を進める必要があります。
執筆・監修
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鈴木 慎太郎 | Shintaro Suzuki |
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新井 辰和 | Tatsuo Arai |